月刊『弘前』2021年12月号(第509号)

特集 ご存知ですか? 「茶太楼新聞」 ― その弐 ― 

 大正から昭和初期の弘前で「茶太楼新聞」と題する異色の新聞が発行されていた。発行人は、弘前公園の観桜会の先駆けとなる花見を敢行した「呑気倶楽部」の中心人物としても知られる「茶太楼」こと古木名均。「花柳界の御用新聞」を自称していたように、花柳界の芸妓たちや遊び人の檀那衆などを相手に当初は年1回、正月の年賀広告を載せて発行していたが、やがて月刊、週刊と発行回数を伸ばし、ゴシップや暴露記事が満載の紙面は当時、大きな話題をさらった。
 また「資本家の奴隷雑誌」とも称し、誰でも分かる誇張やうそをあえて掲げることで権力を嘲笑。紙上では芸妓の人権擁護や貴族院廃止を主張。治安維持法などを痛烈に批判し、プロレタリア文学運動支援を展開するなど、反骨精神旺盛で社会風刺の利いた記事も多数掲載された。
 現在、青森市の東奥日報社本社と神奈川県横浜市の神奈川近代文学館にまとまった量が収蔵されている。弘前の異才が手掛けた知られざるその神髄を(東奥日報社黒石支社長でもある外崎英明氏が)先月号に引き続き紹介する。


表紙写真

  • 聖夜のスキップ ・・・・・・ 工藤亮裕 (全日本写真連盟会員)
  • 巻頭随想
    街へのまなざしがひらくもの ・・・・・ 佐々木蓉子 (弘前れんが倉庫美術館 学芸チーム)
  • 特集 ご存知ですか? 「茶太楼新聞」 ―その弐― 
    ・誇れる郷土に「愛の鞭」 ・・・・・ 外崎英明(東奥日報社 黒石支社長・弘前大学大学院地域社会研究科)
  • サイエンス、ときどきナンセンス  その49
    名前はおもしろい ・・・・・・ 清水俊夫 (弘前大学名誉教授)
  • 猫の時間 30 
    再会の日 ・・・・・・ 清水典子 (ライター)
  • さまよえる演劇人 249
    静物① セザンヌの複製 ・・・・・・ 長谷川孝治 (劇作家・演出家)
  • ガマシンの半覚醒日記 134
    またまた自慢しちゃうのだ!(濱田庄司さん)・・・・・・ 鎌田紳爾 (音楽家)
  • 多々他譚~TATATATAN~ 128
    カミガミの楽園~鳴海の紙や~ ・・・・・・ 世良 啓 (文筆家)
  • 整体雑想庵 33 
    空に開いた穴!? ・・・・・・ 前田普山 (じねん堂休息庵)
  • ニャンともワンダフル 249
    おっちゃんのつぶやき ・・・・・・ 蒔苗隆人
  • 誌上美術館―對馬基起の世界 6 (最終回)―――知らないようで知っている、記憶の奥にある情景たち。夢の中のような、どこかおかしな世界。世代を超えて我々を結ぶ共通の「懐かしさ」がここにある。  
    「雪待ち=心地よい冷たさ」 ・・・・・・ 對馬基起 
  • 男の厨房 249
    クリスマスケーキ ・・・・・・ 藤盛嘉章 (藤盛医院
  • 文化とデザイン 32 
    共有スペース・・・・ スティーブン・マックウィニー (弘前学院大学文学部英語英米文学科 講師)
  • 発信 学都ひろさき 134
    津軽白神湖に眠る17縄文遺跡群 ・・・・・・ 三上盛一 (弘前大学副理事(社会連携担当))
  • 続 よしなしごと 27
    オオカミ少年 ・・・・・・ 福井次郎 (物書き)
  • 男→女リレー随想 192
    多世代交流の拠点を目指して ・・・・・・ 中田早樹子(東地区ちいきの絆食堂)
  • 医者様のくりごと
    私とお酒 ・・・・・吉田尚弘 (吉田クリニック院長)
  • 旅の窓から 305
    シバの思い出 散歩道 ③ ・・・・・・ 根深 誠 (著述業)
  • ましらの珍句漫句 353
    モテ男 ・・・・・ 高森ましら (俳人)
  • 私と美術と心の話 5
    自分の物差し ・・・・・・ わたなべゆりか
  • 霜ネタ劇場 226
    せんりゅう水滸伝(続 英治と映画の巻)・・・・・・ 高瀬霜石 (柳人)
  • 昆虫学者の日常 49
    海外からやってくる害虫に注意 ・・・・・・ 中村剛之 (弘前大学教員)
  • 今月の一冊
    『石ころ路』 ・・・・・・ 奈良 匠 (まわりみち文庫店主)
  • 11月のベストセラーズ
  • 湯けむり津軽 9 
    心地よい孤独の世界 ・・・・・・ 鎌田祥史 (温泉ソムリエ)
  • 弘前告知板・出版案内
  • 目次
  • 表紙によせて・・・・・・ 工藤亮裕 (日本写真連盟会員)

    聖夜のスキップ

     冬の風物詩「弘前エレクトリカルファンタジーで市民はロマンチックな色彩空間を長年楽しんできたが、2017年のイベントは特別であった。「弘前フィンランドクリスマスマーケットが企画され、旧弘前市立図書館を丸ごとイルミネーションで飾ったのだ。デザイン担当の谷川喜美氏は、リンゴのハート型をモチーフに、弘前の温かさを込めて「Apple Heart」と命名した。
     見学者の波が引いた広場に細雪が降り始め、クリスマスソングに合わせ影踏みしながらスキップする一組の母子の姿には、この上ないファンタジーが溢れていた。

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