月刊『弘前』2021年11月号(第508号)

特集 ご存知ですか? 「茶太楼新聞」 ― その壱 ― 

 大正から昭和初期の弘前で「茶太楼新聞」と題する異色の新聞が発行されていた。発行人は、弘前公園の観桜会の先駆けとなる花見を敢行した「呑気倶楽部」の中心人物としても知られる「茶太楼」こと古木名均。「花柳界の御用新聞」を自称していたように、花柳界の芸妓たちや遊び人の檀那衆などを相手に当初は年1回、正月の年賀広告を載せて発行していたが、やがて月刊、週刊と発行回数を伸ばし、ゴシップや暴露記事が満載の紙面は当時、大きな話題をさらった。
 また「資本家の奴隷雑誌」とも称し、誰でも分かる誇張やうそをあえて掲げることで権力を嘲笑。紙上では芸妓の人権擁護や貴族院廃止を主張。治安維持法などを痛烈に批判し、プロレタリア文学運動支援を展開するなど、反骨精神旺盛で社会風刺の利いた記事も多数掲載された。
 現在、青森市の東奥日報社本社と神奈川県横浜市の神奈川近代文学館にまとまった量が収蔵されている。弘前の異才が手掛けた知られざるその神髄を(東奥日報社黒石支社長でもある外崎英明氏が)12月号と2号にわたり紹介する。


表紙写真

  • 曼殊沙華 ・・・・・・ 工藤亮裕 (全日本写真連盟会員)
  • 巻頭随想
    グッド・バイ ・・・・・ 木村和生 (月刊『弘前』発行・編集人)
  • 特集 ご存知ですか? 「茶太楼新聞」 ―その壱― 
    ・異色の紙面 弘前を活写 ・・・・・ 外崎英明(東奥日報社 黒石支社長・弘前大学大学院地域社会研究科)
  • サイエンス、ときどきナンセンス  その48
    今年のノーベル賞ウィーク ・・・・・・ 清水俊夫 (弘前大学名誉教授)
  • 猫の時間 29 
    密林に潜むように ・・・・・・ 清水典子 (ライター)
  • さまよえる演劇人 248
    読み切り小説 ⑦ ・・・・・・ 長谷川孝治 (劇作家・演出家)
  • ガマシンの半覚醒日記 133
    かぶれちゃったのだ!・・・・・・ 鎌田紳爾 (音楽家)
  • 多々他譚~TATATATAN~ 127
    藤田清正からの挑戦状 ~カサイコ10年記念展~ ・・・・・・ 世良 啓 (文筆家)
  • 整体雑想庵 32 
    身代り地蔵 ・・・・・・ 前田普山 (じねん堂休息庵)
  • ニャンともワンダフル 248
    おっちゃんのつぶやき ・・・・・・ 蒔苗隆人
  • 誌上美術館―對馬基起の世界 5 ―――知らないようで知っている、記憶の奥にある情景たち。夢の中のような、どこかおかしな世界。世代を超えて我々を結ぶ共通の「懐かしさ」がここにある。  
    「昭和の詰まった箱(弐)」 ・・・・・・ 對馬基起 
  • 男の厨房 248
    ふりかける「桜でんぶトースト」 ・・・・・・ はしもと棒 (此岸俳句会
  • 文化とデザイン 31 
    共有スペース・・・・ スティーブン・マックウィニー (弘前学院大学文学部英語英米文学科 講師)
  • 発信 学都ひろさき 133
    りんごの生産と流通の変容 ・・・・・・ 成田拓未 (放送大学青森学習センター客員准教授・弘前大学農学生命科学部准教授)
  • 続 よしなしごと 26
    人間は考える葦である ・・・・・・ 福井次郎 (物書き)
  • 男→女リレー随想 191
    全ての人に安心を ・・・・・・ 村井龍大(専求院住職)
  • 医者様のくりごと
    果物と私 ・・・・・吉田尚弘 (吉田クリニック院長)
  • 旅の窓から 304
    シバの思い出 散歩道 ② ・・・・・・ 根深 誠 (著述業)
  • ましらの珍句漫句 352
    妄想 ・・・・・ 高森ましら (俳人)
  • 私と美術と心の話 4
    物について ・・・・・・ わたなべゆりか
  • 霜ネタ劇場 225
    せんりゅう水滸伝(英治と映画の巻)・・・・・・ 高瀬霜石 (柳人)
  • 昆虫学者の日常 48
    山には色々な人がやってくる ・・・・・・ 中村剛之 (弘前大学教員)
  • 今月の一冊
    『読書からはじまる』 ・・・・・・ 奈良 匠 (まわりみち文庫店主)
  • 10月のベストセラーズ
  • 湯けむり津軽 8 
    行きたい温泉とは ・・・・・・ 鎌田祥史 (温泉ソムリエ)
  • 弘前告知板・出版案内
  • 目次
  • 表紙によせて・・・・・・ 工藤亮裕 (日本写真連盟会員)

    曼殊沙華

     子供の頃、遊び回った土手や野辺に、赤い曼殊沙華(彼岸花)が咲いていて、綺麗だなと感じたものだったが、「彼岸花を家に持ち帰ると火事になる」とか「彼岸花を摘むと死人がでる」という謂れがあり、いつしか津軽地方からはこの花がめっきり減ってしまった。
     曼殊沙華の花は、両手を揃えた様な独特の形と鮮やかな赤色で、仏教では天界に咲く花の一つとされ、最勝院においては大切に育てられており、毎秋参拝者を迎えてくれる。
     この花を真上から写すと天界の広がりを連想する写真となるが、今回は五重塔と横顔のツーショットで撮影した。

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